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米国輸出管理規則(EAR)の基礎知識と2025年9月改正法への備え
2025年9月、米国の輸出管理規則(EAR)の改正が発表されました。その内容として、これまでは規制リストに掲載されている企業との取引のみを制裁対象としていたのを、改正後は当該企業を実質的に支配している事業体との取引も制裁対象とする「関連事業体ルール」が適用されることになりました。 EARとは具体的に何に基づき何を規制しているものか、その上下階層を明確にすることで全体が把握しやすくなります。
法律 輸出管理改革法(ECRA: Export Control Reform Act) 2018年、第一次トランプ政権により立法。軍事転用の恐れがある米国の新興技術や基盤技術の国外流出を防ぎ、安全保障を確保する目的。特に中国やロシアなどの競争国やテロ組織への技術流出阻止を意図したものと言われています。 ▼
規則
輸出管理規則(EAR: Export Administration Regulations) ECRAに基づき、戦略物資や民生・軍事両用品の輸出・再輸出・国内移転を規制することを目的に米国商務省 産業・安全保障局(BIS)が管轄する規則。 ▼
ルール 規制品目リスト(CCL: Commerce Control List) EARに基づき、規制の対象となる品目・ソフトウェア・技術を定めたリスト。 エンティティリスト(EL: Entity List)CCL掲載品目を輸出・再輸出する際に米国商務省 産業・安全保障局(BIS)の許可が必要となる事業体や個人などが掲載されたリスト。ただし、BISの審査方針は「原則不許可」であるため、実質的には「NGリスト」の意味合いが強い。 図の通り、EARは2018年に立法されたECRAという法律に基づき制定された規則で、実際の運用においてはCCLやELでルール化されています。そして、冒頭の「実質的に支配している事業体も制裁対象とする」というのは、ELの対象範囲が拡大されたことに起因しています。
では次に、2025年9月のEAR改正における重要なポイントである「制裁対象の拡大」について、改正前後の図を用いて説明します。 EAR改正前改正前は輸出先企業だけが規制対象のため、当該企業がELに掲載されているかを確認すれば問題ありませんでした。
改正後はBISが新たに「関連事業体ルール(affiliates rule)」を導入したことで、輸出先企業に加え、当該企業の株式を直接的または間接的に50%以上保有している「実質的に支配している事業体」も規制対象となります。さらに、ELに加えて軍事エンドユーザーリストの「MEUリスト」や、米国の財務省(OFAC)により米国人の関与の禁止を定めた企業・個人リストの「SDNリスト」にもその適用範囲を拡大することになります。そのため、株の保有比率から資本構造を明確にし、実質的に支配している事業体すべてに対しEL掲載を確認しなければならなくなります。 輸出先に対し、株主Aは株を直接50%保有、株主Dは子会社の株主Bと株主Cを経由して間接的に50%保有していますが、仮に株主Aか株主DがELに掲載されていた場合は輸出先も規制対象となります。
輸出先に対し、株主Aを経由して株を30%保有している株主Cと、20%保有している株主Bの株を合算すると50%となりますが、仮に株主Bと株主CがELに掲載されていた場合は輸出先も規制対象となります。
なお、50%に満たない場合は50%ルールの適用はありませんが、BISが提示している「取引に不正の可能性があると疑うべき兆候」、いわゆる「レッドフラッグ」に該当することになり、追加のデューデリジェンス実施などが求められています。また、株の保有割合が特定できず50%ルールの適用が判断できない場合は、取引前にBISから許可を取得するか、適用可能な許可例外を特定する必要があります。 TSRの業務提携先であり、全世界6億件超の企業データベースを保有するDun & Bradstreet(D&B)が提供している以下3つのサービスでEAR対策が可能です。 サービス名 比較項目 D&B Onboard D&B Risk Analytics– コンプライアンス・インテリジェンス D&B DataBlock 提供方法 オンライン オンライン オンライン API バッチファイル 株主情報の取得方法 Webで個社レポートを購入 Webで個社情報を確認 各ツールからCSV、JSON形式で提供 二次以降の株主情報取得 〇 〇 〇 実質的支配者の確認 〇 〇 〇 規制リストスクリーニング 〇 ※オプション 〇 × モニタリング(変動通知) × 〇 〇 ※API連携が必要 概要 実質的支配者や資本系列情報の他、企業情報、メディアや制裁リスト等のスクリーニングなどコンプライアンスチェックに必要なあらゆる情報や機能を搭載。 取引先の実態特定、メディアや制裁リスト等のスクリーニング、モニタリング&アラート、各種リスク指標の取得など、コンプライアンスリスク管理を効率的にする機能を網羅。 D&Bが保有する企業情報をカスタマイズしてご提供。利用方法に応じてオンライン、API、バッチファイルでの提供が可能。 TSRではお客さま毎に異なる課題に対しベストなソリューションをご提案いたします。EAR対策でお困りの方、これから米国企業や製品のお取り扱いを始めようとお考えの方、現状の運用見直しをご検討されている方など、少しでもご興味がありましたら是非お気軽にお問い合わせください。
2025/12/02 by TSR-PLUS編集部
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